自らの黒歴史に教えられたワタクシ

三十路をすぎた辺りから整理整頓が好きになったミステリ作家・天祢涼です。

その前はあまり片づけが好きではなくて、使わないものはとりあえず段ボール箱に詰めて放置しておりました。これではいかん! と一念発起して、家の中を大掃除。さらに実家に置いたままにしていた段ボール箱を整理したところ、出るわ出るわ、いろいろな過去の遺産に遭遇しました。

まずはなつかしいものから

SNSにもアップしましたが、存在をすっかり忘れていたなつかしいものに再会できました。

この辺は「なつかしい!」「こんなのあったわ!」と楽しく見られます。大掃除の醍醐味(?)ですよね。が、中には自分の負の遺産……いわゆる「黒歴史」も存在するのです。その中でも特に強烈だったのが、紙のノートでした。

序盤で終わってる小説がこんなに!

覚悟はしていましたが、予想以上に量があったのが書きかけの小説。昔はパソコンなんてありませんでしたから、紙のノートにちまちま書いていたのです。で、設定もオチも考えずに書き始めるので早々に頓挫していました。その頓挫した小説がですね、

こんなにあった

全部が小説ではありませんが、8割くらいはそうです。ほぼ序盤で終わっていて、完結しているのは一作だけ。よって、数ページだけ書き込みがしてあって、あとはまったくの白紙です。どれだけ地球資源を無駄にしてるんだ、自分。

内容はミステリからファンタジーまで様々ですが、最も衝撃&ツボだったのが『魔石物語』と銘打った小説でした。タイトルから察するに、おそらくファイナルファンタジー6の影響を受けて書いたのでしょう。

FF6は魔石を巡る話でした。

『魔石物語』は、壮大な物語を予感させる「序章」が書かれています。すごく大きな世界観の話のようです。ちょっとわくわくします。でも序章しかありません。せめて一章の一行……いや、一単語くらい書けよ、自分。一体なにがしたかったんだよ。主人公とか考えてたのかよ。

と、まあ、紙のノートはいろいろ衝撃でしたが、これはまだ覚悟していたので耐えられました。しかし、完全に存在を忘れていて、不意打ちで大ダメージを受けたものがありました。

それは、ゲームの企画書です。

そういえばゲーム会社にエントリーシートを送ってた

就職活動中、突然、小説家になろうと決意した天祢涼。が、賞に送っても結果が出るまでは時間がかかる。このままでは就職活動が終わってしまう。そこで「ゲーム会社に入れば小説を書けるんじゃないか?」と思って、入社試験を受けたことがありました。

我ながら、完全に認識が間違ってますね。

書類選考で求められたのが、ゲームの企画書でした。無論、小説家志望者にそんなものが書けるはずもなく、それでも無理やりA4用紙10枚くらいの企画書を仕上げました。いま見ると、よくこんなもの会社に送ったなレベルです。内容に関しては恥ずかしいので割愛しますが、送られた方も、さぞ困ったことでしょう。だいたい、あんまりゲームをやらないのに、ゲームの企画書なんて書けるはずがない(^_^;)

さすがに3、4社送ったところで「ゲーム会社に入っても小説は書けない」と気づき、この業界の就職活動からは撤退しました。なので、すっかり忘れていたのですが、わからないのはどうして会社から送り返されてきた書類を後生大事に段ボール箱の中にしまっておいたのかです。さっさと捨てればいいじゃん。使い物になる企画じゃないことは、当時の自分でもわかってたんだから(笑)。

バカだけど、がむしゃらだった

とまあ、黒歴史に浸りすぎて精神的にも真っ黒になってしまったのですが、一方で、こうも思います。

当時は、「とにかく小説家になりたくて必死だったな」と。

おかげさまでどうにか小説家になってから、内容や売上に関して厳しい意見をいただくこともあります。中には貴重なご意見もありますが、どう考えても理不尽だったり、納得できなかったりするものもある。そういうときは、小説を書くのが嫌になります。

でも昔の自分がそれを知ったら、半狂乱になって激怒することでしょう。「せっかく小説家になれたのになに言ってやがる!」と。

黒歴史も、自分にとっては貴重な歴史の一つ。がんばって小説を書こうと改めて誓った大掃除でした。