カバー写真:青山裕企
カバーデザイン:関口聖司
発売日:2022年2月21日
定価:1700円(税別)
出版社:文藝春秋
あなたのお父さんは、殺人犯なの──?
小学五年生の咲陽は、「父親が仕事で帰ってこない」という同級生の小夜子を心配して家に連れ帰る。だが、コロナを気にする母親に小夜子のことを言いだせないまま、自分の部屋に匿うことに。翌日、小夜子を探しているという刑事が咲陽の家を訪ねてくる。小夜子の父親が、ラブホテルで起きた殺人事件の犯人ではないかと疑念を抱く咲陽だが……。
通算20作目です。『希望が死んだ夜に』『あの子の殺人計画』に続く仲田シリーズ第三弾。前二作とのつながりは緩いので、本作から読んでも話はわかります。
帯がつくとこうなる。
前二作と並べるとこうなる。
写真を提供くださっている青山裕企さんのお言葉を参考に、仲田シリーズを3作並べてみた。絶妙のバランスでいい感じ。書店さんでもこうやって置くといいと思うよ!←「これで前2作も入荷される」と考えてる姑息な作者w
— 天祢涼@『陽だまりに至る病』2/21ころ発売 (@amaneryo_on_tw) February 10, 2022
向かって右にある最新刊『陽だまりに至る病』は再来週くらいから発売です。 pic.twitter.com/c4i1UBbBxq
以下、恒例の裏話というか、制作秘話というか。
執筆にあたって
「3作目をやるならコロナ禍をテーマにしたい」というのは、前作『あの子の殺人計画』の執筆が最終盤に差しかかったころから考えていました。このシリーズの性質上、避けては通れないと思ったからです。その当時は「書き終えるころにはコロナも収束してるだろう」と呑気に思ってたんですけどね。
自分が書いているのも書きたいのもあくまでミステリー(エンタメ)なので、コロナ禍をそこにどう落とし込むか、かなり悩みました。半分くらいまで書いたところで、全面改稿したりもしました(いろいろ葛藤もあって書くのをやめようかとも思ったのですが、その辺りの心情を書くと長くなるので割愛)。
その甲斐あってか、事前にゲラを読んでくれた人から「天祢涼史上最高傑作」という声もいただいており、ありがたいかぎりです。
ちなみに、『希望が死んだ夜に』の後で『あの子の殺人計画』というまったく方向性が違うミステリーを書いたので、『陽だまりに至る病』では「なにをやっても構わないだろう」という気楽さみたいなものはありました。これに関しては、『あの子の…』を書いた自分をほめてやりたい(笑)。
視点人物のこと
今回の視点人物(事実上の主人公)である咲陽(さよ)は、比較的裕福な家の子どもです。『希望が死んだ夜に』の冬野ネガ、『あの子の殺人計画』の椎名きさらともに「貧困」に位置づけられる家庭の子どもだったので、「恵まれている子」を主人公にしたい気持ちは前々からありました。
ただ、きさらに続いて「小五の少女」なのは、どうしようかかなり迷いました。最初は小六だったのですが、卒業が近づく心情を書いてたらページが増えるし、コロナからテーマがずれるので、途中で小五に変更。少年にすることも考えたのですが、自分が書く少年はイマイチ共感してもらえないことが多くてのう(苦笑)。
それに、「友だちを部屋に匿う」という設定が少女同士の方が秘密めいてる感がある気がして(感覚的な問題ですが)、結局、少女のままにしました。
少年を主人公にした話もぼんやり構想しているのですが、「このシリーズでは少女の方が求められてるのでは」とも思っていて、どうするかはまったくの未定です。
担当さんのこと
担当さんは、当初は『あの子の殺人計画』と同じ編集者でしたが、途中で交代になりました。
「担当が変わったら全部ひっくり返されて、最悪、全部ボツになることもある」は小説家あるあるなので内心恐々だったのですが、新担当さんは新担当さんで、天祢涼の意向を踏まえながらいろいろアドバイスをしてくれました。ある登場人物の性格が、新担当チェックによってだいぶ変わっています。どの人物か、考えながら読んでみても楽しいかもです。
なお、前担当さんは『希望が死んだ夜に』のプロットを見て、途中まで一緒につくってくれた編集者でもあります。当時はシリアス路線のプロットを持っていっても、どの編集さんにもなかなか読んでもらえませんでした。そんな中で書かせてくれた前担当さんは、なんと見る目があるのでしょう! 仲田シリーズを好きな人は、この編集者に感謝するといいと思うよ!!(笑)
販促物について
今回、フリーペーパーはつくってません。理由は、下記の記事参照。
でも豆色紙は大量につくりました。版元がポップもつくってくれています。書店員さんの感想コメントつき! こういうポップは憧れなのでうれしい\(^◇^)/
『希望が死んだ夜に』『あの子の殺人計画』と一緒に展開してくれたり、境内シリーズと一緒に置いてくれたりしている書店さんもあるようなので、なにかできないかとは思っております。ちょっと慌ただしくしているので、思っているだけでなにもできないかもしれませんが、「検討はしてるよ」ということでご理解いただければm(_ _)m