音宮美夜5年ぶりの完全新作「ニュクス(仮)」が春に出ます

Miya eye

この春、音宮美夜(おとみや みや)を主人公にした書き下ろし長編を刊行予定です。このキャラクターが主人公の作品は5年ぶりとなります。

「美夜が主人公の小説を読みたい!」と思っていた方々、大変お待たせ致しました。

そもそも音宮美夜とは?

音宮美夜というのは、天祢涼のデビュー作『キョウカンカク』の主人公。音が見える「共感覚」の持ち主の銀髪の女探偵で、警察庁の権力者・矢萩の依頼を受けて難事件、怪事件の捜査をする……というお話。

2010年2月に『キョウカンカク』、7月に『闇ツキチルドレン』と長編を刊行し、翌年、アンソロジー『密室晩餐会』で短編「楢山鍵店、最後の鍵」を上梓……と割合、順調にシリーズを続けていましたが、そこでぷつりと作品が途絶えてしまいました。

『キョウカンカク』はその年の「読者に勧める黄金の本格ミステリー」に選んでいただきましたし、雲の上の存在の作家さんから「続きは書かないの?」とご質問をいただいたこともあります。天祢涼としても「一刻も早く続きを!」と張り切っていたのですが、3作目『ゼロ・トレランス』はなかなかうまくいきませんでした。

幻の3作目『ゼロ・トレランス』

『ゼロ・トレランス』は『キョウカンカク』より前の時代のお話。『キョウカンカク』と違って敬語・お嬢さま言葉で話す美夜が、自身の強すぎる共感覚を抑えるべく、とある学園都市ヘ。そこで知り合った准教授に恋をする。一方、美夜を自分の探偵にするべく矢萩が動き出す。

ミステリ的には、犯人の殺人トリックを解き明かすハウダニット。これを見破るものの、准教授との恋に破れた美夜は自暴自棄になって矢萩の探偵になる……という、エピソード・ゼロ的なストーリーにするつもりでした。

2012年の夏ころ、解決編直前まで書いたのですが、あまりにつまらないのですべてボツに。一方で、『葬式組曲』『セシューズ・ハイ』が望外の評価をいただき、ほかのお仕事が一気に増えました。ありがたいことではあるのですが、『ゼロ・トレランス』にはなかなか腰を据えて取り組めない状態に。『葬式組曲』のシリアス路線や、『セシューズ・ハイ』のコメディ路線を求められるようになったのですね。

もちろん、美夜のようなマンガ的ノリの路線も好きなので、水面下では書いては消して、書いては消してを繰り返していました。が、どうしても納得できるものができず。新レーベルの講談社タイガでやらせていただくことになってからも、担当Y氏から数々の指摘を受け、徐々に迷走が激しくなっていきました。

そして2015年の秋。

4年間、断続的に書き続けましたが、とうとう全部破棄することにしました。

『ニュクス』誕生

『ゼロ・トレランス』を基軸に考えていた美夜と矢萩の設定もすべて破棄。完全にリセットして書き始めたのが『ニュクス(仮)』です。これが思いのほか筆が進み、当初の予定より大幅に早く脱稿。晴れて今春刊行の運びとなりました。

4年悩んだものより数ヵ月で書き上げたものの方がおもしろいのだから、小説はわからない(笑)。

正式な発売日や内容に関しては改めてお知らせしますが、終わってみれば『ニュクス』は、『キョウカンカク』のエピソード・ゼロというよりは「新シリーズが始まった」に近い状態になってしまいました。

それでも音宮美夜は音宮美夜ですし、既刊の美夜シリーズを読んだことがある人にも、ない人にも楽しんでもらえる内容になっております。続報をお待ちいただければ幸いm(_ _)m

毎年予告していた「ゼロ・トレランス」という単語が書けなくなるのは、実はちょっと寂しい……。 by 天祢涼(あまね りょう)