『罪びとの手』

カバー装画:宮坂猛
カバーデザイン:大原由衣
発売日:2018年6月29日
定価:1600円(税別)
出版社:角川書店

 

葬儀屋の矜持、刑事の矜持が絡み合う、衝撃&慟哭のサスペンスミステリー!

廃ビルで中年男性の死体が発見された。身元が判明しない中、葬儀屋が遺体を引き取りにくるが、葬儀屋・御木本悠司は、その遺体を目にした瞬間、刮目した。「これは俺の親父だ」。その偶然に疑問を持った刑事・滝沢圭は、単なる事故死と判断する本部に反発するようにその遺体に固執する。世の中を賑わす幼女連続殺人事件、葬儀屋の葛藤と苦悩、不遇な警察官を親に持つ刑事のトラウマ……様々な要素が絡み合う中、意外な犯人と動機が明らかに! 平和な生活を犠牲にしてでも守らなければならない、刑事と葬儀屋の誇りとは……慟哭の社会派ミステリー。

14作目です。いつもは帯を取ったバージョンをアップしていますが、今回は実際に見てほしいので割愛。ネットでは帯なし版の表紙がアップされてますけどね(笑)。

以下、いつものように裏話などを。

内容に関して

タイトルは、土壇場まで『咎人の手』でした。「罪人の手」も候補だったのですが、「つみびと」と読むか「ざいにん」と読むかわからず、混乱を招くと思ったのです。一方で、「咎人って一瞬読めなくない?」という迷いもありました。が、「『罪びと』にすれば解決じゃん!」と気づき、急いで担当さんに連絡。「まだ変えられる」ということなので変更してもらいました。

各話で決着がつかず大きな謎を残したまま話が進む、長編色の強い連作短編です。横山秀夫さんの『半落ち』が大好きで、こういう形式のものを一度書いてみたかったのです。自分にとっては初めての試みで、なかなか楽しかった。

ちなみにこの小説、昨年9月に上梓した『希望が死んだ夜に』よりずっと前から書き始めていました。やけに時間がかかった理由はいろいろあるのですが、最大の理由はラストを変えたことです。当初は、まったく違う結末を構想していました。が、いざ書き上げてみたら全くおもしろくない。自分でも「ちょっと違うか?」と思っていたのですが、担当編集者からもそう言われた。登場人物の描き方も中途半端。

そこで、冒頭に出てくる刑事の出番を大幅にアップ。こいつが真面目に捜査した結果、ラストシーンが大幅に変わりました。そう、初期の構想ではこの刑事はろくに仕事をしていなかったのです。完成版では別人のように働き者となり、担当さんから帯に「ハイエナのような刑事」と書かれるまでになりました。

現役の葬儀屋さんに何度も話を聞いたし、各地で開催されている終活や葬儀屋のセミナーにも足を運んだし、もう葬式に関しては書き尽くしました。二度とテーマにすることはないでしょう……といまは思ってますが、『葬式組曲』を書いた直後も同じことを言っていたので、将来どうなるかはわかりません。

イラストと帯

表紙イラストは宮坂猛さん。男くさい作品の雰囲気に合った、渋くてかっこいいイラストをいただきました。喫煙者が肩身の狭い思いをしているこのご時世に、敢えてタバコを持っている男。いいなあ、これ……自分はタバコ苦手なんだけど(笑)。

でも劇中に愛煙家が出てくるし、手に目線が行くことで『罪びとの手』というタイトルが際立ってくるし、「この小説にはこれしかない」というくらいぴったりのイラストだと思います。

そして帯にコメントをくださったのは、なんと壇蜜さん。何度も「思いがけない方にゲラを読んでいただいている」と告知してきましたが、わかった人はまずいないだろう(笑)。情報解禁になった後は「うらやましい!」「すげえ!」に類するメールやLINEがたくさん届きました(ふふー、いいだろう)。

近所のスーパーに買い物に行っている最中に担当さんからメールが来て、「壇蜜さんが読んでくださることになりました」という一文を見たときの天祢涼の反応は、ご想像にお任せ致します。

壇蜜さんのコメントは、帯だけでなく、ご覧のように書店展示用のパネルにも掲載。「読者さんにこういうところを読んでほしいなあ」と思っていたポイントをずばり言葉にしていただき、感激と感謝の気持ちで一杯です。パネルをつくってくれた担当さんにも感謝(`_´)ゞ

『罪びとの手』は男くさかったけど…

『罪びとの手』は、ハイエナ刑事(担当さん命名)が捜査したり、次男が周囲の反対を押し切って葬式を強行しようとしたりと、かなり男くさい小説です。女性の登場人物が極端に少ないです。そんな天祢涼史上かつてないレベルで男くさい小説になった本作ですが、次に世に出る予定の短編『風林火山(仮)』(アンソロジーに収録)は、もっと男くさいです。とうとう男しか出てきません。これまで銀髪少女とか、お花好きの不思議少女とか書いていた反動が来たとしか思えない。

この反動の反動というわけではありませんが、秋刊行予定の『巫女の推理に御利益あり(仮)』は雑用係が美少女巫女さんといちゃいちゃしながら事件を解決するラブコメになっております。ラブコメが大好きなので、ノリノリで執筆中。乞うご期待!です。

『巫女の推理に御利益あり』は、単行本化にあたって『境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖』に改題しました。刊行時の記事は<a href="https://www.amaneryo.com/2018/11/15thbook/">こちら</a>です。
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天祢 涼
あまね りょう
第43回メフィスト賞を受賞してデビューしたミステリー作家です。代表作は次回作。読んだ人の胸を抉るようなミステリー、胸きゅんラブコメなミステリーを世に送るべく日夜模索中。このブログでは仕事情報のほか、MacやiPhoneのネタ、猫写真などをアップしております。