『謎解き広報課』裏話その3(全4回)

第1回第2回から続き)

デビュー前、自治体広報マンを主役にした短編を新人賞に投稿したことはある。これについては……あまり語りたくない(苦笑)。

その後、念願かなって2010年2月に『キョウカンカク』でメフィスト賞を受賞してデビュー。ただ、講談社では「ライトノベル的なノリのミステリ」を求められ、自治体広報紙をテーマにした企画を提案できる環境になかった。

講談社以外からも依頼をいただくようになると、話を聞いてくれそうな編集者に企画を持っていったが、なかなか通らなかった。ある編集者からは「編集者が主役の小説は新鮮味がない」と却下された。当時は「なぜ自治体広報マンの熱意がわからない?」と思ったが、振り返れば「自治体広報マン=編集者」と見なされるプレゼンをした私に問題があるのは明らかだ。

なお、企画を持っていった編集者の中には原書房のI氏もいて、自治体広報紙ミステリは実現しなかったものの、『葬式組曲』という様々な文学賞にノミネートされた作品を書くことができた。
なにが言いたいのかと言うと、「却下した編集者は許さん!」と恨んでいるわけではない、ということである……念のため(笑)。

そして2013年4月、幻冬舎の担当と初顔合わせ。今度こそ自治体広報紙ミステリを、と思っていたが、家を出る直前、ふと気づいた。

「いままでのプレゼンでは実物がないから、イメージしてもらえなかったのでは?」

慌てて押し入れから手持ちの自治体広報紙を取り出し、いざ打ち合わせヘ。実物を見せて話をしたところ、「公務員がこんなすごいものをつくっているなんて!」と驚かれ、これまでの苦労が嘘のように、すんなり企画が通った。
かくして、ようやく自治体広報紙ミステリが動き出したのである。

ちなみに、その時に持っていったのは2008年全国広報コンクール内閣総理大臣賞(最優秀賞)を受賞した『広報まにわ』。
「農業苦しいか楽しいか」。この見出しだけで読んでみたくなりませんか?(PDFはこちら

第4回に続く)

天祢 涼(あまね りょう)
天祢涼

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天祢 涼
あまね りょう
第43回メフィスト賞を受賞してデビューしたミステリー作家です。代表作は次回作。読んだ人の胸を抉るようなミステリー、胸きゅんラブコメなミステリーを世に送るべく日夜模索中。このブログでは仕事情報のほか、MacやiPhoneのネタ、猫写真などをアップしております。

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